実行委員長ごあいさつ
実行委員長の法橋聡(ほうはし さとし)です。
92歳になる私の母は、約5年前から三木市にある高齢者施設に入所しており、事業所の皆さんに感謝しきれない程、暖かくしてもらっています。ただ、認知症を発症してから約20年に渡る 長い長い時間を「全てが受け身で、してもらう」日々として続けてきた今、要介護5となった母は、殆んどの時間を部屋でただただテレビを眺めて過ごすようになっています。私としては、母の介護度が軽く、まだまだ元気であった頃に、受け身ではなく「自分から何かをして楽しむ」経験を一杯させてあげたかったと思っています。その頃の私は現役真っ最中、母のことは殆どお構いなしだったので、余計にこうした悔いが残っています。
そうした時、東京で実施された「注文を間違える料理店」を知りました。ここでは、認知症の方々が笑顔で働いているではありませんか。もし母がもう少し元気な頃にこんな場所に出逢えばどうだったろう?元々、人前に出ていくタイプではなかったけど、この料理店のように「間違い」を受け入れる優しい空気感が流れる場所であれば、結構、楽しめたかも。すぐに全てを忘れるだろうけど、それでも「自分が主人公となって何かしたという楽しかった感覚」は生活の彩りとなってどこかに残っていくんではないかな? 私はリタイア後、丹波でこんな取組みができればなんて素晴らしい事やろ、そんな事を強く思いました。
これが私自身の出発点です。
認知症の方を人前に出すことに違和感を持たれてしまうかもしれません。でも、あえて「注文をまちがえる」と銘打つことで、お客様には、もし注文に間違いがあっても”だんない”と温かく受け入れていただき、柔らかな空気が流れる中で、認知症の方やそのご家族が安心して多くの人達と触れ合える機会になれば、これはこれで地域の新しい関係性づくりになるのではないかな?そんな風に思います。(2019.7)